プリンスは、自分のドラムのことをどう思ってたんだろう。
そんなことを、ふと思うことがあります。
上手いと思ってたんでしょうか。そうは思ってなかったんでしょうか。
この『America』のドラムソロでは、途中でギターがかぶってきたりしてます。
ひょっとしたら本当にライブで鳴ってた音かも知れませんが、
手癖と音色からプリンス本人がオーバーダブしたものに聞こえます。
要は、本人もドラムにはそういうジャッジをしてたんじゃないか、と。
ドラムだけだと、さすがに苦しいな、と。
では人に任せろという話なんですが、そうもいかない。
歌を歌う人にとってドラムは、技術より生理の問題であり、
上手かろうが何だろうが合わないものは合わない、
といった話をどこかで聞いたことがあります。
個人の生理が全開な音楽をやってたプリンスにとって、
自分のドラムは、聴いてるだけのこちらとは違った意味で、
かなり重要だったのかもと思ったりするのです。
プリンス本人よりもプリンスらしいドラムを叩けるのは、
冗談でも何でもなく、ドラムマシンのLinn Drumだったんでしょう。
いびつなタイミングと、クラップに聞こえないクラップ音。
実に変態であり、生のドラム以上に人の生理が伝わってきます。
これまた噂を聞いただけですが、このマシンを入手したとき、
プリンスは嬉しくて嬉しくて抱いて寝たんだとか。
「自分のドラムでは無理なメジャーシーンに、この音なら行ける」
と思ったんじゃないかと、勝手に妄想したりしてます。